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公益財団法人日本盲導犬協会

第2回 白い杖を持つまで

白い杖を持つまで

Aさんは40歳代男性。
糖尿病で通院するようになって数年が経っています。
糖尿病は眼にも影響するようになり、だんだんに見えなくなって
大勢の人が行きかう病院内で人にぶつかったり、
受付がどこにあるのか分からなくなりました。
一人では移動できなくなり、足は悪くなかったのですが、
車椅子に乗せられて運ばれるようになりました。 

最初にAさんの異変に気づいたのは看護師でした。
Aさんが全然しゃべらない。表情がまったく出ない。
着ているものはいつもトレーナーの上下にサンダルをつっかけ、
前回ついていた汚れが今回もそのまま、着替えている様子がない。
まるで生きる力をなくしているかのようでした。 

これは見えないことが原因なのだろうか。何かできることはないか。
看護師はコーディネーター(視覚障害に関する相談の専門家)に相談しました。
コーディネーターはAさんを訪問しました。
Aさんは海辺の小さな集落にご両親と3人で住んでいました。
1日のほとんどを居間のコタツにもぐりこんで過ごし、
外に出ると言えば病院だけという生活でした。
ご家族との会話もありません。
何か聞かれれば、ハイとうなずくか、イイエと首を振るかのどちらかでした。 

「目が見えなくても、練習を積み重ねれば一人で歩くことができます。
少しでも歩く練習をしてみませんか…。」
コーディネーターの言葉に、ご両親は反対しました。
親戚の多い田舎の町、白い杖を持って外出すれば、
目が不自由なことがあっという間に広まってしまう。
そんなことはさせたくない。
Aさん自身は、ハイでもイイエでもありませんでした。 

コーディネーターは、訓練ではなくとも気分転換のために…とご両親を説得し、
日本盲導犬協会の視覚障害リハビリテーション訓練士が
定期的に訪問することになりました。
しかし、訪問しても返事をしてくれないため会話ができません。
まずはAさんの気持ちを聞きたい。
訓練士は、訪問するたびに一緒に近所の海に出かけ話しかけました。
Aさんは自宅では何も話しませんでしたが、
外に出ると見えなくなる前のことをぽつりぽつりと話しました。
記憶をたどっている時は、今までにない楽しそうな表情を見せました。
しかし現在のことを尋ねられると、ただ首を振って黙りこんでしまうのでした。 

何回目かの訪問の時、ご家族から
「Aの様子が変わった。今まで急に悲しい表情になることが多かったのに、
最近それがなくなった」という話が出ました。
訓練士は「白杖を使った訓練を始めたいと思う」とAさんとご両親に話しました。
ご両親は白杖を使う訓練には反対しました。
「Aも白杖なんて持ちたくないでしょう?」
お母さんがAさんに言います。するとAさんは大きな声で答えました。
「持つ!」
ここが、実際の訓練の始まりでした。

一番大切なのは、訓練に入る前のリハビリテーションの入り口に立った時の
Aさんのような葛藤や家族との関わりや周りの環境なのかもしれません。
今回のお話でそのことを感じていただけたらと思います。
もちろん、ここからも課題は山積み。
訓練だけで解決できることは日常生活のほんの一部なのです。
これについては次回ふれましょう。 

訓練して1年が経った頃、Aさんの通院は続いていました。
体調によっては車椅子で移動をしていますが、
看護師が呼びかければ振り向き、冗談には声を上げて笑います。
そして服装は、ジーパンにスニーカーです。
ご両親が仕事から帰宅した後、白杖を持って一緒に散歩に出ることもあるそうです。

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